Take It Easy

語りたいこと。備忘録。

感想文:ダンサー・イン・ザ・ダーク

 

ダンサー・イン・ザ・ダーク [DVD]

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<感想>

 「ミュージカル映画」だとは知らなかったので、工場で突然歌い踊り始めた時はビックリしました。(セルマの妄想だし、一般的なミュージカル映画とは少しジャンルが異なるけど。)それでも、この楽しそうに歌い踊るシーンが、この映画見ている私自身を作品の悲壮感から引き上げてくれると同時に、よりどん底の現実へ突き落す役割を果たしてて面白い。

救いようのない鬱ラストとして有名な映画なわけですが、バッドエンドだと知らずに見た方がよりショックだっただろうなぁ。処刑のシーンは思わず息をのみました。

 

セルマはとても純粋で意思の強い人なんだろうけど、「幼い」とも表現できる人だと思います。そういう人って、自分の気持ちが何よりも先に立つから、自分の言動によって周りがどう思うかとか、どんな影響を及ぼすかが分かっていない。分かっていないから、自分の気持ちだけで自分の思うように行動してしまう。その結果、「外の世界」が不協和音を立てていても、自分の世界にまで何か影響が出てきても、どうすることもできない。だって、周りが見えてないから。

周りから見ているとイライラさせられることあると思うんですよ。「もうちょっと上手く立ち回れないの」と、見ていた私が何よりそんな気持ちになってしまいました。不器用なんだろうけど、もうちょっとさぁ…とね。日頃からあれほどサポートしてくれる親友のキャシーとか、求婚してくれるジェフみたいなのもいたのに、あんまり人間関係を上手に築けてはいなかったんだろうなぁ。(キャシーも、手術の費用を勝手に弁護士に使おうとしたのは良くはないんだろうけど、友人を助けたい彼女の気持ちは理解はできる。)

 

セルマはなんというか、「自分の世界」だけを生きている人という印象です。そこには、キャシーもジェフもビルもリンダもいない。もしかしたら、ジーンもいないかもしれない。息子のために命がけで奔走する母親の物語なのに、親子愛の印象が薄いのは、セルマがその世界から出なかったからなのかなぁと思ったりする。そういう意味でも、盲目的な生き方をしていたのかなぁ。唯一、その中身を周囲に見せたのが死ぬ間際(死刑執行直前のミュージカルシーン)だったというのも皮肉なものですね。

まぁ、そもそもお金を盗んだビルが悪いんですけどね。なんとなく精神的に幼いけど、障害を抱えながら懸命に働いて手術費用を貯めていたセルマがあのような結末になるのは、やっぱりやり切れないなぁ…。

 

でも、セルマの望みって、息子ジーンに手術を受けさせることが全てで、それ以外のことは割とどうでもいいのかなという印象だったので、最後ジーンの手術が成功したことを聞くことが出来て、本人は意外と幸せだったんじゃないかなと思ったりします。

あのお金を、手術に使うか弁護士に使うかは、ジーンが決めれば良かったと思う。まぁ、セルマは「自分の世界」の人だから、そんなの絶対嫌なんだろうけどね。